立型(垂直型)マシニングセンタ、横型マシニングセンタの違いとは?

最終更新日時: 2024/05/21 08:50

マシニングセンタは、NC工作機械の中でも特に多機能で汎用性の高い加工機です。その中でも、立型(垂直型)マシニングセンタと横型マシニングセンタは、それぞれ異なる特徴を持っています。この記事では、立型マシニングセンタと横型マシニングセンタの違いについて、詳しく解説します。

立型(垂直型)マシニングセンタの特徴

立型マシニングセンタは、主軸が垂直方向に配置されているタイプのマシニングセンタです。以下のような特徴があります。

  1. 加工物の着脱が容易:テーブル上に加工物を直接載せられるため、着脱が簡単です。
  2. 切りくずの排出が良好:切りくずがテーブル上に落ちるため、排出が容易です。
  3. 高い剛性:主軸が短く、スピンドルヘッドが重量物であるため、高い剛性が得られます。
  4. 幅広い加工に対応:様々な形状や大きさの加工物に対応できます。

立型マシニングセンタは、比較的小型の部品から大型の部品まで、幅広い加工に適しています。金型の加工や、aerospace部品の加工などに利用されることが多いです。

横型マシニングセンタの特徴

横型マシニングセンタは、主軸が水平方向に配置されているタイプのマシニングセンタです。以下のような特徴があります。

  1. 長尺物の加工に適している:テーブルが横方向に長いため、長い加工物を安定して保持できます。
  2. 重量物の加工に適している:テーブルの剛性が高いため、重量のある加工物を確実に保持できます。
  3. 高い生産性:複数の面を一度に加工できるため、生産性が高くなります。
  4. APC(自動パレットチェンジャー)との組み合わせに適している:APCを使用することで、無人運転が可能になります。

横型マシニングセンタは、自動車部品や建設機械部品など、比較的大きく重量のある部品の加工に適しています。また、APCとの組み合わせにより、24時間無人運転が可能になるため、大量生産にも対応できます。

立型と横型の主な違い

立型マシニングセンタと横型マシニングセンタの主な違いを、以下の表にまとめます。

項目 立型マシニングセンタ 横型マシニングセンタ
主軸の配置 垂直方向 水平方向
加工物の着脱 容易 やや困難
切りくずの排出 良好 やや困難
剛性 高い 非常に高い
適した加工物 小型~大型部品 長尺物、重量物
生産性 高い 非常に高い
APCとの組み合わせ 可能 非常に適している

立型マシニングセンタは、主軸が垂直方向に配置されているため、加工物の着脱や切りくずの排出が容易です。一方、横型マシニングセンタは、主軸が水平方向に配置されているため、長尺物や重量物の加工に適しており、APCとの組み合わせにより高い生産性を実現できます。

加工事例

立型マシニングセンタと横型マシニングセンタの加工事例を紹介します。

立型マシニングセンタの加工事例

  • 自動車部品:エンジンブロックやシリンダーヘッドの加工
  • 金型部品:プラスチック射出成形用の金型や、ダイカスト用の金型の加工
  • 医療機器部品:人工関節や歯科インプラントの加工

横型マシニングセンタの加工事例

  • 建設機械部品:油圧シリンダーや走行モーターケースの加工
  • 産業機械部品:ポンプやコンプレッサーのケーシングの加工
  • 鉄道車両部品:車体の構体やボルスタの加工

これらの事例からも、立型マシニングセンタと横型マシニングセンタが、それぞれの特徴を活かして様々な分野で活用されていることがわかります。

選定のポイント

立型マシニングセンタと横型マシニングセンタは、それぞれ異なる特徴を持っているため、加工する部品の特性に応じて適切に選定する必要があります。以下に、選定のポイントを示します。

  1. 加工物の形状と大きさ:加工物の形状や大きさに応じて、立型か横型かを選択します。
  2. 加工物の重量:重量のある加工物は、横型マシニングセンタが適しています。
  3. 加工の種類:複数の面を同時に加工する場合は、横型マシニングセンタが適しています。
  4. 生産量:大量生産を行う場合は、APCとの組み合わせが可能な横型マシニングセンタが適しています。
  5. 工場のレイアウト:立型マシニングセンタは占有面積が小さいため、限られたスペースに設置できます。

これらのポイントを考慮し、自社の製品や生産体制に適したマシニングセンタを選定することが重要です。

まとめ

立型マシニングセンタと横型マシニングセンタは、主軸の配置方向が異なるため、それぞれ固有の特徴を持っています。立型マシニングセンタは、加工物の着脱や切りくずの排出が容易で、幅広い加工に適しています。一方、横型マシニングセンタは、長尺物や重量物の加工に適しており、APCとの組み合わせにより高い生産性を実現できます。

自動車部品や建設機械部品、金型部品、医療機器部品など、様々な分野で立型マシニングセンタと横型マシニングセンタが活用されています。加工物の形状や大きさ、重量、加工の種類、生産量、工場のレイアウトなどを考慮して、適切なマシニングセンタを選定することが重要です。

立型マシニングセンタと横型マシニングセンタの特徴を理解し、自社の製品や生産体制に適したマシニングセンタを導入することで、効率的かつ高品質な加工を実現できるでしょう。生産現場の要求に応え、競争力を高めるためにも、マシニングセンタの選定は重要な意思決定だと言えます。

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